編集編(2/3)

 役者の演技だけを事前に録音し、編集段階で効果音や音楽を加えていく編集方法は技術マンの「知恵と勇気」がかなり必要になります。こころして読んでくださいね。

 編集のやり方は大きくわけて二通りあります。1つはマスター録音機材にDATなどを使用し、複数の人数で役者の演技の音を聴きながら効果音や音楽をタイミングよく挿入していく手法です。役者の演技以外はほとんど一発録音と変わらず、擬似的な一発録音と思っていただいてもよいでしょう。ただ、この方法なら役者のNGを心配する必要もなく、技術側のNGもやり直しが簡単なため恐れることはありません。役者の演技を収録するスタジオが短時間しか借りられず、技術NGなんかはもってのほかっという場合に向いているでしょう。ただし、技術アシスタントが複数人必要となります。効果音などの凝った作品に仕上げようとすると結構な人海戦術となってしまう欠点もあります。


 例えば、機材のセッティングは図のようになります。まずマスター録音する機材、ここでは据え置き型のDATを用意しましょう。音を混ぜるためのミキサー、効果音や音楽、役者の演技の元などを一度に出せるように、なるべくチャンネル数の多いものを使用しましょう。そして効果音や音楽などを再生する機器。必要な分だけ揃えて下さい。

 さて、セッティングもすんだところで、実際の編集に入ります。まず、編集マスター(責任者)を決めて下さい。これからの編集作業はその人が中心になって作業を進めす。通常、編集マスターは役者の声と効果音の音量バランスなどをチェックしますので、同時にミキサーを担当すると良いでしょう。次にマスター録音機担当者を決めて下さい。編集マスターの合図に合わせて録音機材(今回はDAT)をスタートしたりストップさせたりします。そして最後に、効果音&音楽再生アシスタントを決めて下さい。台本、または技術用台本に書かれたCueシート(Cueシートに関しては「音響劇の作り方〜台本編〜」をご参照ください)や編集マスターの合図に合わせて再生させます。

 編集の手順はこの場合一発録音の手順と同じようになります。まず、編集マスターの合図でDATをスタート、さらに合図で演技音声をスタートさせます。この際、DATのスタートから2〜3秒空けておくと最終編集の時に便利です。演技音声がスターとしたら、みんな台本と格闘しましょう。実際の音声と台本を見ながら次に出す効果音の準備をしておきます。
 ここで、ちょっとしたノウハウ。効果音は編集の手間などを考えずに次々と出てくることが多いです。例えば、街の雑踏の中、派手な急ブレーキの音とともに現れた黒塗りの怪しげな車。いきなりマシンガンをぶっぱなし始めた・・・・。こんなシーンならどうします?おおざっぱにわけますと、効果音は3つ。「街の雑踏」「急ブレーキ」「マシンガン」。あと、役者の「なんだなんだ?どうした?」というガヤと「やべぇ!奴等だ!」という追われている主人公の演技が入るかも知れませんね。ガヤと主人公を1つの音にまとめておいても4つの音の素材が必要になります。でも、これらの音を1台の効果音再生機で再生し、1つ1つ順番に再生するのでは全然意味が分かりませんよね。そこで、これらの効果音を別々の効果音再生機器に分類してあげるのです。
 この場合、最低3台の効果音再生機が必要です。効果音再生機1号(以後、効1号)には「街の雑踏」をSE1として、効果音再生機2号(以後、効2号)には「急ブレーキ」のSE2と「マシンガン」のSE2を、効果音再生機3号(以後、効3号)には役者の演技の音声を入れておきます。これならば、効1号で街の雑踏をスタートさせながら、効2号で急ブレーキ音を再生。すかさず、効3号で演技音声を再生。「やべぇ!奴等だ!」の声が聞こえたと同時に再び効2号でマシンガンの音を再生してやる・・っといった手順です(図参照)。


このような手順で根気よく編集すればシーンごとに効果音まで入ったものができますので後はまとめてあげればよいわけですね。

では、次に人手が足りなくても大丈夫、一人でも編集ができるMTR(Multi Track Recorder)を使った編集方法を説明いたしましょう。

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